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ラスベンチュラス ZPD ラスベンチュラス警察署
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四季「困りましたね…明日で留置期間が切れてしまいますし…」

四季は溜息混じりに呟く。そうは言いながらも手はしっかりと動かしておりパソコンと睨めっこをしている。
留置期間、というのはパチュリー・ノーレッジの事だ。任意同行を掛け、事情聴取をしたものの、思ったような情報を得るには至らず相変わらず否認を続けるばかり。
ヴァピッド社の話では交渉を担当したのは彼女ではなくレミリア・スカーレットなのだが、生憎レミリアの行方は突き止められていない。
パチュリーに聞けば良いだろう、と思うかもしれないが既に聞いている。もちろん答えは予想していた通り「どこにいるかはわからない」
仲間思いなのも良い事だが、これでは捜査にはならないのだ。
四季は少しでもパチュリーの留置期間を延ばそうと考え、彼女の経歴などを洗いざらい調べ、犯罪の臭いはないかさがすも今のところ空振りだ。

四季「…今回は諦めて一度保釈するのが妥当かもしれませんね」

打つ手はすべて打ったがここまで駄目となると一度引いた方が良い結果を招くかもしれない。四季はそう判断することを決めたようだ。

小町「四季様、どうしたんですか?」

と、ここで部下である小町が声を掛けてくる。

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四季「小町、今までどこに居たんですか?」

四季は真っ先に小町にどこにいたかを尋ねる。休憩時間と言うものがあるとはいえ、時刻はもう昼過ぎ。出勤時刻から大幅に遅刻しているのだ。

小町「いやあ、ちょっと…昨日から紅魔カジノに捜査に行ってたんですよ」

小町は目を逸らしながら答える。なるほど、捜査という建前で遊びに行っていたのだろうと四季は睨む。

四季「いいですか、小町。捜査はお遊びなんかじゃない。それをわかって言っているんですか?」
小町「は、はい…」

四季の説教はまだ続き、数十分ほど経過したところでやっと説教が終わる。
四季からすればまだ足りないくらいであるが、これ以上続けている暇はないのだ。

四季「さて…紅魔カジノで何か見つかったんですか?」
小町「特に大したことは見つかってませんが…レミリアの妹と話すことは出来ました」
四季「…それで?」
小町「フランドールはかなり疲れ切っているようだったのと、パチュリーの安否を気にしていました」

小町は紅魔カジノでフランドールと話したことを洗いざらいに話す――もちろん小町がパチュリーについての情報を軽く教えたのは話さずに。
四季は小町の話を「うんうん」と頷きながら口を挟むことなく聞く。

四季「そうですか。レミリアに関して何か言ってました?」
小町「生憎それを聞く前に部屋に入られてしまって…残念ながら聞きだせませんでした」

小町自身、レミリアの居場所を聞きたいところであったが、フランドールの疲労具合を見て、あえて気を遣い触れないでおいたのだ。
もちろんそんなことを小町は四季に伝えない。しかし、もしかすると四季自身は小町のそんな計らいに気づいているのかもしれない。そんな淡い期待を小町は胸に抱くのだった。



ロスサントス アルターコーポレーション 本社ビル
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ここはアメリカを代表する企業の一つ、アルターの本社ビルだ。
アルターは2006年に開業した大手不動産会社で、現在は不動産業に留まらず、政府公認の傭兵仕事なども承っている。

一般企業では珍しいだろう。アルターは私設部隊「マサコチーム」を有しており、このマサコは米軍のシールズとまでは行かないが、劣る劣らずと言ったプロ集団なのだ。

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?「ええ、その条件で構わないわ。頼んだわよ」

携帯を切ると同時にポケットにしまう女性。彼女こそがこのアルター社のCEO、風見幽香だ。
彼女は2代目であり、先代のCEOは何者かによって暗殺されてしまった。重役であった彼女が芋づる式でCEOになったということである。
もちろん重役になるというのはそれだけ彼女は腕があったということ。先代亡き今、彼女は先代に劣る劣らず非常に優秀な成果を遂げており、社員からの人望も厚い。
――極度のサドであるということを除けばだが

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幽香「代表取締役と言うポストも楽じゃないわね」

幽香はデスクに腰掛けながら資料を読み漁る。芋づる式でなったとはいえ、一つの企業の大黒柱。問題行動は許されない。
だが、アルター社には報道されてはマズイような事実も多く存在する。
例えばギャングや犯罪者との癒着。街の情報を得るには街に蔓延るギャングほど速報性が高く柔軟性が利き、正確性がある程度確保されているものもないだろう。
ギャングに限らずアルター社はZPDとの癒着もある。わかりやすく言えばZPDの情報を横流ししてもらっているという事だ。
これだけのスキャンダルがありながら、表沙汰にならないのは各方面に手を回しているからだ。アメリカを代表する企業だけあり、仕事も早ければ経済的な面でも非常に強力。
幽香自身がCEOになる前から人望が厚かったというのもあるだろう。

さて、そんなアルター社が主体となって活動している組織がもう1つある。”環境保全団体 太陽の花”だ。
アルター社が全面的な支援を行って成り立っているこの”太陽の花”は砂漠の緑化を目指して活動している組織だ。この組織の創設者は他でもない、風見幽香自身だ。
さて、そんな太陽の花だが、実態は”報道されている事実”とは180度異なっている。もちろん”報道されている事実”も事実に変わりはないのだが、”報道されていない事実”もある。
――そう、麻薬やコカインと言ったドラッグの栽培だ。マサコチームによって厳重に守られた地域で栽培されているのだ。
なにも麻薬やコカインだけではない。危険ドラッグと呼ばれる、合法に収まってしまうような薬物も栽培しているのだ。

さて、ここまでアルター社について語ってきたわけだがもう1つ語るべきことがある。”兵器開発”だ。
アルター社は自前の技術を用いて兵器の開発にも乗り出しており、ついに初の自社兵器”ベアー装甲車”を開発した。

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このベアー装甲車は大手自動車メーカー「ブルート」と合同で開発した次世代の装甲車であり、武装は装甲車らしからぬ120mm滑空砲を撃てるという凶悪な代物なのだ。

ここまで語ることがあるという事はアルター社がそれだけ規模が大きく、影響力が大きいという事を示しているということだろう。

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幽香「空港までお願いできるかしら」
運転手「了解しました」

幽香は次なる仕事の為にリムジンでの移動を開始する。
アルター社はアピールを大事にしており、この自社が使うリムジンまでもアルターのロゴとコピーが書かれている徹底ぶりだ。
もちろんこれは先代社長からの伝統ではあるが、これを守る幽香も幽香である。アルターがここまで成長したのもこの自己主張の強さが関係しているのかもしれない。



サンフィエロ ドハティ サプリ製造工場 ミーティングルーム
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Jake(Ja)「おい、これは何だ?」
Sasha(Sa)「ああ、それは襲撃に使う粘着爆弾の材料のC4ですよ」

ミーティングルームに入ったばかりのジェイクは真っ先に机の上にあるC4について尋ねる。
ジェイクはサーシャからの説明を受けて思い出したように口を開く。

Ja「あー…そういや襲撃の話もあったな」
Sa「トライアドのおかげで準備が遅れましたしねえ…」
Ja「それで…プランってのは決まってんのか?」
Sa「ええ、決まってますよ」

ジェイクが思い出したのはルチャドールズで行う”襲撃プラン”のことだ。
トライアドによるルチャドールズに対する包囲攻撃や、トライアドへの報復により、先延ばしされていたこの襲撃プラン。
しかし報復以降、トライアドはサンフィエロの支配を諦めつつあるのか、トライアドを見かける機会は減りつつある。
ルチャドールズからすればそれが当然の結果であり、ボスはトライアドを壊滅させる勢いでいる。

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Sa「日取りが決まり次第ジェイクさんにも連絡しますね」
Ja「それはありがたいことだが、今日は何の用で呼んだんだ?」
Sa「くれぐれもボスにはご内密でお願いしたいのですが」
Ja「構わねーけど俺にしか話さない理由ってのはあるのか?」
Sa「ボスが聞いたらすぐにでも飛びついてしまいますから…今は”襲撃プラン”を優先したいので」

サーシャがジェイクを呼び出した理由。それはボスには内緒の話をするためだ。
”襲撃プラン”を優先するためとはいえ、わざわざボスに内緒にするような話は思いつかない。
ジェイクは腕を組みながら考えを巡らすが、サーシャが自分の携帯を取り出し、画面をジェイクに見せる。

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映し出されているのはサンフィエロ国際空港の格納庫を写したもの。シャッターの開いた格納庫からは大型の飛行機と思われる機体の一部が映し出されている。

Ja「この写真がどうかしたのか?」
Sa「ルチャドールズの格納庫が空港にあるのは知ってますよね」
Ja「そりゃこの前もハインドを使ったくらいだからな、知らねーわけがないだろ」
Sa「ルチャドールズの整備士が送ってくれた写真です。この写っている飛行機、どこから来たと思いますか?」
Ja「どこから来ようが俺たちには関係ないんじゃねーか?」
Sa「それがそんなことないんです。これは中国から来た貨物機です。なんでも飛行機と一緒に黒いバンと中国系の男たちが居たとかで…何か臭いません?」

サーシャがジェイクに見せたのはルチャドールズの整備士から送られてきた画像。
一緒に記述されていたメールの内容によれば、「中国系の男」と「黒いバン」が確認されたらしい。
そして”中国から来た貨物機”。武器や車を欲していたトライアドのを先日横取りしたことを考えればこの貨物機は総合的にトライアドの物資を運んでいた可能性が十分に高いというわけだ。

Ja「…目撃されたコイツらがトライアドだって言いたいのか?」
Sa「ご名答です。ずばり、私は彼らがトライアドだと睨んでいます」
Ja「仮にトライアドだとしてもよ、ボスに内緒にする理由がわからないぜ?」
Sa「こんな話をすればすぐにでもボスはプランそっちのけでトライアド潰しに回るのは確実ですからね」

サーシャは冷静にボスを分析し、もしもこの話をした場合のことを想定する。ボスの性格からいえば、トライアドが少しでも行動を起こせばトライアド潰しに回るのは確実だ。
しかしサーシャからしてみれば今はトライアド潰しよりも”襲撃プラン”を優先して欲しい所なのだ。

Ja「そこまで”プラン”に固執する理由がわからねーな」
Sa「あの基地にある”グリーン・グー”が必要なんですよ。分析もしたいですし」
Ja「文句はねぇけどな」

ジェイクは半分呆れつつも、サーシャの意見に同意する。
自分の出来ることと言えば銃で人を打ち抜いたり、乗り物を運転したりすることくらいしかできない。
もちろん頭脳的な面で言えばそれなりに頭がキレる方だが、上には上がいる。頭を使うようなことはサーシャに任せれば問題にはならない。
ジェイク自身が頭を使うよりも体を使う方が好きというのもあるだろう。

Ja「日取りが決まったら教えてくれ。シェリーを待たせてんだ。これから飯でよ」
Sa「それは悪い事をしちゃいましたね…どこに行くか知りませんけど楽しんで来てくださいね」

ジェイクは外でシェリーを待たせている旨をサーシャへ伝え、日取りが決まり次第連絡するように伝えるとミーティングルームを後にする。
陽は傾きはじめ、ゆっくり赤くなって行く空をジェイクは見上げながら拠点を後にするのだった。