ティエラ・ロバーダ ラスバランカス
シャーマンダムの近くにある小さな田舎町、ラスバランカス。
普通ならばトラック野郎や車での長旅をする者たちがガソリンの補充や、モーテルでの宿泊目的で滞在する程度の、長居するのも済むのも暇な街だ。
観光地としての目玉と言えばあくまでシャーマンダムが一望できる程度な物。後は……と、思い出すことも出来なくらいの退屈な街だ。
とは言え、だからこそ、その過疎っている街を好んで縄張りとする者たちがいるのも事実。
Franklin(Fr)「本当にここか?」
魔理沙「ああ、確かにここだぜ」
ラスベンチュラスから西へ数時間。朝方に出たというのに気付けば時間はお昼前。
そろそろお腹の空く頃合いだが、それよりも今、優先すべきは”移動サプリ製造車”の所在だ。
レスター、そしてショーンディによれば、この”移動サプリ製造車”とやらはここ、ラスバランカス周辺を中心に移動しつつ、サプリを製造しているらしい。
Shaudi(Sh)「ええ、その町のどこかにあるはずよ。赤紫のボディのはずだからすぐに見つけられると思うけど」
Fr「聞こえてたのか。赤紫ってことはカモフラージュ用ってわけじゃなさそうだ」
なんでもその移動サプリ製造車は赤紫色の派手なペイントが施されているようであり、目立つ外見らしい。
こんな田舎町で、しかもそんな派手な色の車となれば見つけるのは簡単なはずだが……。フランクリンは適当にラスバランカスを走らせてその所在を追う。
魔理沙「アレじゃないか?」
Fr「……随分悪趣味なカスタムだな」
魔理沙が指差す方に見えるのは赤紫色で派手なペイントが施されているキャンピングカー。
赤紫のボディに女性のノーズアート、そしてゴールドのトリムカラー。その派手なデザインは恐らくすれ違えば誰もが一度振り返るレベル。
もはやその存在感は隠す気を全く感じられない代物だ。
魔理沙「随分貧相な武器だな」
確認できる敵はおおよそ5、6人と言ったところか。相手の装備は見る限りハンドガンとマック10。どちらも脅威と呼ぶには程遠い武器だ。
対するこちらはMP5とショットガン。戦力差は十分。相手はおそらく戦闘慣れもしていない事だろう。と、なれば――。
ダダダダダダ!!!
急襲あるのみ。2人は物陰から飛び出せば銃を彼らに向けてトリガーを引きまくる。とは言え、急襲を仕掛けられた側も黙ってやられるわけではない。
すぐさま応戦し、車を遮蔽物とする者も確認できる。
Fr「チッ、思ったより厄介だな」
既に何人かは蹴散らした物の、意外とプアホワイトの連中も危険と隣合わせで生きて来たのだろう。以外と”サバイバルスキル”は高いようだ。
だが、幾度となく、様々な事をやってのけた彼らの前に、プアホワイトの連中が敵うわけもない。
Fr「これでも喰らえ!」
痺れを切らしたフランクリンは手榴弾を1つ、敵が遮蔽物としているラットトラックに向かって投げ込む。
そして次の瞬間には――。
ドーーーーン!!!!!
爆発音とともに、1930年代の古めかしいトラックは爆発四散し、その爆風で敵は吹き飛ばされていく。晴れてこれで一掃が完了したわけだ。
これで後はキャンパーを砂漠の飛行場へ持っていくだけ……のはずなのだが。
魔理沙「フランクリン、増援がやって来たみたいだぜ」
続々と駆け付けてくるのはオフロードバイクに乗ったプアホワイトやポンコツに近い古めかしい車に乗りつけてくるプアホワイト共。
ここ数日、彼らの業務を妨害したり、ドラッグなどを強奪してただけに警戒されていたのだろう。人数にして先ほどと同じく6人ほどだろうか。
恐らく彼らはドラッグが幾度となく強奪され、仲間も殺されている。赤字なのは間違いない。そうとなれば、こちらを殺す勢いで迫ってくるのも納得だ。
Fr「殺るしかねえな」
キャンパーを強奪して逃走しながら、という選択肢もないわけではない。
だが、バンをベースにしたキャンピングカーと言うことを考えれば鈍足ですぐに追いつかれてしまうのはなのは確実。
となればここでさっさと敵を一掃するのが賢い判断だろう。耐久性も決して良いとは言えないキャンピングカーだからこその選択だ。
ダダダダダダ!!!
激しい撃ち合い、しかしながらスキルで言えばフランクリンと魔理沙の方が彼らより上なのは目に見えている。
的確に頭を打ち抜いて行き、血しぶきと共に絶命していくプアホワイト達。
Fr「次が来る前にさっさとズラかるぞ!」
2人は足早に趣味の悪い赤紫のキャンピングカーに乗り込めば、エンジンをスタートさせ、方向をラスベンチュラス方面、クライアントの待つ砂漠の飛行場へと向けて行く。
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バーダントメダウ 飛行場
ラスベンチュラスからほど近い田舎町、バーダントメダウにある砂漠の飛行場。
かつては廃飛行場で”飛行機の墓場”などと言われていたここも、現在はとある人物が買い取ったらしく、その光景も変わりつつあるようだ。
Fr「あんたが依頼主か?」
藍「ああ、いかにも」
飛行場で待ち受けていたのはアジア系の女性。
女性らしい体つきは実に世の、特に頭の悪いアメリカ人のハートをガッツリ掴むのは間違いない。まあ、フランクリンの好みではないようだが。
それはともかくとして、何故彼女のような女性がこのような物をオーダーしたのだろうか。
地価が安い場所とは言え、このような飛行場を買うだけの財力を持つであろう人物がわざわざこのような車を調達させる理由。
不思議ではあるがお金がもらえるのなら気にするだけ野暮だろうか。
藍「これがサプリ製造車か……」
魔理沙「報酬はレスターの方から連絡が行ってると思うからそこに頼むぜ」
流石のクライアントもこの移動サプリ製造車の派手さ加減には驚きを隠せないようだ。無論悪い方での。
無理もないだろう、こんな派手で目立つ外観をしていることなど、流石にクライアント側も予想していなかったことなのだから。それはフランクリンと魔理沙も同じだ。
魔理沙はクライアントである彼女に報酬はその講座に振り込むように伝えれば、フランクリンと共に彼女が用意してくれた古い車へと乗りかえる。
Fr「結構スムーズに進んだな」
今度は行きとは逆で魔理沙がそのハンドルを握る。既に陽は暮れつつあるが、ここからならば1時間もかからずにガレージに戻れることだろう。
2人は進路をラスベンチュラスの拠点であるガレージへ向けて車を走らせていく。
Act.35/Act.37