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ロスサントス ロスサントス警察署 内部
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四季「はあ……ここまで問題が山積みになるとは、思いもしませんでした」
小町「お疲れ気味ですね、四季様。偶には一緒にのんびりしません?」
四季「それが出来たら苦労はしませんよ。ですが、偶には良いかもしれませんね」

ロスサントス警察署はここ数日、非常にざわついている。ひっきりなしに911から通報の電話がSAPDに回され、
またSAPDの電話に直接駆けてくる人も非常に多く、ロスサントスとラスベンチュラスの2か所を中心に日夜ひっきりなしに電話が鳴る。

主な内容は3つ。1つはSTAG関連。彼らはやはり予想通り”害をなす存在”だった。
庭先に侵入してきたというような物から、ギャングと銃撃戦を繰り広げて窓を壊された、車を壊された……とやりたい放題。

2つ、ラスベンチュラス近辺での少女と獣人の目撃情報。
STAGが研究施設として使っていたらしい、エリア69にて実験が失敗し、大量の死者が出たらしく、加えて米軍筋の情報ではSTAGが管理していたという実験体が逃走したらしい。
もしかすると、目撃情報が相次ぐこの少女と獣人は何かしらの形でエリア69の一連の事件に関係しているのかもしれない……。

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3つ、通り魔。エリア69を境に西側で通り魔的な殺人が行われている。特に最近はサンフィエロで頻発している模様。
しかし、これと言った物的証拠が見つからず、防犯カメラも運悪く鮮明な映像が手に入っていない。
とはいえ、これもまたエリア69の一連の騒動が関連しているような気がしてならない。故に真相はまだ闇の中だ。

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小町「それじゃあ、飲みに行きましょう、四季様」
四季「そうですね……息抜きも必要な事ですから」

小町に誘われるがまま、四季は必要な資料を最低限クリップして自身のカバンに仕舞い込む。
時刻は丁度夕方の5時。定時の時間だ。ここ最近は残業続きだったが、偶には定時帰りも悪くないだろう。



サンアンドレアス 詳細不明
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サンアンドレアス某所、デッカーズの拠点。彼らはサンアンドレアスに進出後、しばらくその身を潜めていたが、
徐々に混沌の渦にのみ込まれているサンアンドレアスで巻き起こる様々な事件や混乱に乗じて、ようやく行動を開始したようだ。

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「ボス、マーシャルローが敢行されるようです」
?「そんなものは関係ない。予定通り進めよう。モーニングスターのドンはサンフィエロに移ったらしいしな」

デッカーズのボス、本名不詳。しかし、1つわかっていることがある。
それはハッキングの腕は非常に高いと言う事、そしてデッカーズ内部において、彼は”ボス”もしくは”JACK”とハンドルネームで呼ばれている。
今の時代、名前は何も本名じゃなければダメということは少なくなった。それだけSNS、いやインターネットが普及したという事だろう。

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JACK「1週間後、アルターのスーパーコンピューターが輸送される予定だ。それを強奪する。妨害も受ける事だろう。STAGに、シンジケート、両方からな」

デッカーズがこのタイミングで動き始めたのは何も、サンアンドレアスが混沌の渦に包まれたから、それだけの理由ではない。
彼らの一番の目的はアルター・スーパーコンピューター・バージョン2。
アメリカに存在するスーパーコンピューターの中でおそらくもっとも性能が高いとされている代物だ。
アルター社が開発したこのスーパーコンピューターは世界的な目で見ても、やはりトップクラスに相当し、常に”進化し続けているコンピューター”だ。
それをハッキング集団とも揶揄されるようなデッカーズが狙わないわけがないだろう。



バインウッド リッチマン 邸宅
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エリー「外に出して良かったのかしら……」
こころ「お庭なら大丈夫だと思うよ。ちゃんと影になるように車を置いてあるわけだし」

ロスサントス北部、バインウッド。今日の天気は快晴。
サンアンドレアス州が位置するアメリカの西海岸は基本的に乾いた気候が特徴であり、雨や曇りになることはそう多くはない。
しかし、やはり最近は温暖化の影響か、異常気象も見られるようになり、ハリケーンが襲ったり、雨が降ったり、曇り空が広がることも珍しくはなくなってしまった。

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こころ「ねえ、この家には慣れた?」
Yo「……ぼちぼちだな」

幽香はヨーヘイの面倒はすべてこころとエリーに任せた。幽香自身がずっと面倒を見切れないというのもあるが、
現在仕事をある程度絞っているこころだからこそ、時間的な余裕があることを考えればこころが彼の面倒を見るのは十分可能だろう。
現在、こころはあの事件以降、ドラマの撮影と彼女がラジオパーソナリティを務めているアルターFMの収録以外の仕事は引き受けていないらしい。
傷が癒えているのは間違いないだろうが、彼女にとってまだ復帰するタイミングではないと考えているのだろう。
ただでさえ、ここ最近のアメリカはSTAGに関連した騒動で激しく揺れ動いているのだから……。

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エリー「まだ私たちの事は信頼できないかしら?」
Yo「……いや、信頼してねえわけじゃねえが、俺にはわからねえことが多すぎる」

ヨーヘイにとって、この世界に存在する物の多くが”未知の物”だ。故に不安要素の方が圧倒的に多い。
ましてや、STAGに酷い仕打ちを受け、虐げられてきたともなれば、人を信用する行為そのものが彼にとって難しい事は容易に想像が付く。
一夜を同じ屋根の下で過ごしたと言えど、幽香の計らいで彼は別の部屋があてがわれたので、食事時以外はあまり接触もなかった。

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こころ「わからないことが多いならいろいろ教えてあげた方が良いかな……車の運転とか」
Yo「運転?」
こころ「そう、運転。そこに止まってる車を動かすの」

こころが指差す方向には幽香が所有するいくつかの車が並べられている。
どれもエキゾチックカーと言われる類の高級車ばかりだが、中にはアメリカ製の現行車や庶民的な車もいくつかガレージの中にはあるらしい。
ある意味、カーコレクターを自負するだけのことはあるだろう。

こころが指差したのはドイツ御三家と呼ばれるメーカーの1つ、ウーバーマフト社の最新スーパーカーSC1。
PHEV、つまりガソリンとハイブリッドモーターによって動く最新技術がふんだんに投入されている車両だ。

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エリー「他のドライバーが彼が運転してると気付いたら一気にブリッターで拡散されるわよ?それを避ける為に彼をここに連れてきたんだから……」
こころ「でもずっと家に引きこもってても映画見るくらいしかすることが無くなっちゃうよ?」

こころの思いとしてはヨーヘイにいろいろこの世界の娯楽や仕事……とにかくこの世界の常識をいろいろ教えてあげたいようなのだが、
エリーの言う通り、一度でも外に出してしまえばSNSでの拡散は免れない。獣人は本来”存在していなかった種族”なのだから。
獣や動物が大好きな人からすれば彼らの存在はビッグニュースだろうが、皆が皆、受け入れられるわけではない。
ただでさえ、アメリカは長年に渡って”人種差別”に苦しんできた国だ。昔より大分マシになったと言えど、それでも未だに人種差別を失くし切る事が出来ていない。

故に、彼が”世間の目”に晒された際、一体どんなことが起こるのか、容易に想像が付くと同時に、今のご時世では何が起こるかもわからない。
そんな恐怖心や、彼を思う幽香の気持ちが、彼を隠したがる心理に繋がる。だが、いつまでもそれが出来ない事もまた、幽香が一番理解している。

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こころ「猫さんにはもう少しこの世界の事知ってもらいたいんだけどな……」
エリー「猫さん……」
こころ「そう、猫さん。ヨーヘイさんって感じじゃないし……」

女優とはマイペースな性格な人が多いのかもしれない。
こころは不思議な事に、ヨーヘイを呼ぶときに何故か”猫さん”と呼ぶ。
無論、彼はネコ科の動物と人間との半人半獣である為、間違いではないのだが、一応”ホワイトタイガーの亜種”と結論づいているのだが。

また、それに加えて何故か他人に彼の事を話すときは”大きいニャンコの人”と呼ぶ。
……彼女に悪気はないのだろうが、いささかペット扱いしている節が否めないとエリーは思わざるを得ない。

まさか、自身をも超える、マイペースで天然なところがこころにあったとは……。



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