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ボーンカウンティ バーダントメダウ 飛行場
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紫「動かざること山の如しとはよく言ったものね」

STAGの一連の騒動のさ中、八雲ファミリーは操業を停止し、鳴りを潜めて状況を伺っていた。
変に目立てば、まだ地盤も固まり切って居ない組織、STAGのような国家権力の犬に攻められれば、たちまち為す術もなく、投獄されるのが落ちだろう。

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藍「ですが紫様……」
紫「ええ、わかっているわ。そろそろ地盤を固める時期ね」

STAGの解体と共に操業を再開したは良いものの、今サンアンドレアスの裏社会は過渡期。
シンジケートとカルテルがバチバチと凌ぎを削っており、銃撃事件も前より増加傾向にある。
もっとも、銃撃事件に関してはSTAGが火に油を注いだような物だったので、あまり数は当てにならないようにも思えるのだが。

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紫「あなたも知っての通り、サンアンドレアスには2つの巨大な犯罪組織があるわ。私達が必要なのはビジネスパートナー。それを選ぶ時期に入ったと言えるわ」

紫が今求めて居るのはビジネスを拡大するうえで協力関係を結べるビジネスパートナー。と、同時に大口取引先だ。
八雲ファミリーはサンアンドレアス、ひいてはアメリカの裏社会においてはまだまだ弱小とも言えるが、彼女達が取りそろえるドラッグや武器はどれも一級品。
それはインディーズである彼女たちにとっては巨大な組織に対する強力なアドバンテージとなるのだ。

とはいえ、いつまでも一匹狼のように居るわけにもいかない。
長い物には巻かれろ、という言葉があるが、それはアメリカ西海岸でも同じ。いつまでもどことも同盟を組まずに裏社会で生き延びるのは現代においては至難の技だ。
例え、機転を利かせるのが得意な紫と言えど、今回ばかりは危ない賭けには出る時ではないと判断したようだ。

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紫「藍、予定通りの方法でどちらをパートナーにするか選ぶわよ」
藍「はい、紫様」

サンアンドレアス、ひいてはアメリカの裏社会では弱小と言えど、腕や取り扱う物品はすべて他のどんな組織にも負けず劣らない。
故に紫にしてみれば八雲ファミリーは大きい犯罪組織から”選ばれる側”ではなくどこと組むかを”選ぶ側”である。
そして付け加えるならカルテル、そしてシンジケート、どっちの組織も圧潰させる程の切り札は持っている。
――だが、紫は既に確信している。どちらが優勢で、覇権を取るのかを。



バインウッド リッチマン 邸宅
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幽香「そう……無事に見つかったようで何よりだわ」

電話の相手はレミリア。シンジケートという枠組みを得てからというものの、イギリスとアメリカ、両方の国を代表する大手企業のトップ2人は個人的な親交を得ている。
事件当日に彼女の口から妹のグランベル、そして彼女の友人であるロリスが誘拐されたと聞いてすぐさまマサコチームから捜索隊を結成させていたものの、
結局はロリスの親族であるアリスが所属するというストリートレーサーチームのインスティンクトが居所を掴んだという事らしい。

出来る事なら幽香も捜索に加わりたかったのだが、彼女自身が抱える多忙さと問題に手を焼いて、捜索に協力することは叶わなかったようだ。
とはいえ、マサコチームを派遣してくれただけでも、レミリア達にとっては十分か有り難いことではあっただろう。1人よりも2人。多い方が効率は上がる。

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幽香「さて……。今日は2人きりね。あなたとちゃんと話した事、あまり多くはなかったわね」
Yohei(Yh)「基本俺の面倒を見てたのはあの2人だったしな」
幽香「ええ、私は仕事の他にもいろいろすることがあって中々時間が割けなかったの。だから私が信頼しているあの2人にお願いしたのよ」

電話を終えると共に、幽香が視線を向けるのは今、彼女が居候させているヨーヘイだ。
右も左もわからない彼の世話は幽香が信頼しているエリーと友人であるこころにお願いしている。
それは彼と言う存在が、世界に及ぼす影響が未知数である事。そして彼自身もまた、この世界に対しても未知である事。

幽香はSTAGの資料やゼン帝国の残した様々な物から察するにこの世界とは別の世界があるのではないか、と推測している。
無論、現段階で確信を持てる証拠はないし、なによりアプローチすることも敵わず、逆にアプローチされる事もない。

だが、この世界のわかっている事というのは本当に限られている。
この地球、そして宇宙に存在する様々な事象、物質のうち、人間が知っているのはほんの僅かだ。ほんの15年前まで、人類は宇宙人が実在することを知らなかったのだから。

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Yh「今日はあの2人はどうしたんだ?」
幽香「こころは撮影のお仕事、エリーは休暇よ。人間リフレッシュや刺激が必要だもの」

こころは一連の騒動で一時的に活動を休止していたが、傷も癒え、落ち着いてきたのもあり仕事を徐々に再開。
エリーもまた、ここ暫く労働とは異なるものの、家事全般やヨーヘイを任せきりだったので、今日一日くらいは羽を伸ばしてほしいと休暇を与えた。

その為、今日この邸宅に居るのは幽香とヨーヘイ、ただ2人だけである。

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幽香「しかしこうして2人だけだと何を話すべきなのか困ってしまうわね。普段顔を合わせているけれど、あまり話すことはないし」
Yh「……正直、怖い印象しか持ってないんでな」
幽香「初対面の人はみんなそう言うのよね。無理もないんでしょうけど」

意外と2人だけ、というのは会話が弾みにくい時がある。
無言の空間でも居心地の悪さを感じないのがせめてのも救いではあるのだろうが、出来る事ならあまり途切れさせたくはない。
だが、ヨーヘイは幽香に対し少し怖い印象を抱いている。無論、それは幽香も薄々感づいては居たようなのだが。

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Yh「よく言われるのか?」
幽香「怒り顔ってあるでしょう? それと同じね。あなたもどちらかと言えば怒り顔かしら」
Yh「こんな見てくれじゃ怒り顔もクソもないだろ」
幽香「そうかしら。わかる人にはわかると思うけれど」

人にはよく、”笑い顔””泣き顔””怒り顔”……と言うものがある、なんて言ったりする。
特に表情や感情がそこまで表情として現れて居ない時の顔、言わばデフォルト状態と言ったところか。
幽香は間違いなく、怒り顔の部類である。大して、ヨーヘイも怒り顔と言えるだろう。とはいえ、彼は半人半獣。一見すれば表情など見分けがつかない。

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Yh「……それだけ、お互いで過ごしてるってことなのかもな」
幽香「それは言えているかもしれないわね。……そうだ。そろそろあなたにも車の運転を教えないといけないわね」

気付けば、ヨーヘイが彼女の邸宅にやって来てから既に2週間は経過している。それだけ長く過ごせば、自然とわかるものというのは出てきても何らおかしくはない。
と、同時に幽香はそろそろ彼が外へと出て行くべきだとも考える。今暫く、彼と共に暮らすのは全く悪く思わないが、”自立”は必要だと言える。
この国で覚えるべきスキルは何か。それは車の運転だ。確かに、ロスサントスやその周辺は車無しでもある程度は便利な生活は出来る。
しかし、アメリカは大きい田舎町のようなもの。車は生活必需品で、運転スキルは必須と言える。その為、ヨーヘイに車の運転技術を教えるべきだと判断する。