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ロスサントス マルホランドドライブ ジェファーソンモーテル
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時刻はちょうど午前0時を回った所。
ロスサントスと言えども、やや中心街から外れた住宅地にもほど近い場所にあるこのモーテルの近隣はこの時間帯にもなると非常に静かになる。

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霊夢「本当に猫みたいだわ……。うーん、アンタを見てると何か動物が飼いたくなるわね」
雲豹「自分、猫違う……」
霊夢「わかってるわよ。でも猫みたいにアンタが可愛いって言ってるの。それとも可愛いって言われるのは嫌かしら?」

自分の隣で寝そべる雲豹を優しく寝かしつけるように背中を撫でる霊夢。
二人はどこか性格が似て居るところがあるのか、日を追うごとに親密な仲になっているようにも思える。

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雲豹「………誰か、来る」

霊夢の問いかけに答えることなく、暫し間が開いた後、雲豹は耳を一度動かしては、ポツリと口にする。
獣人が故、なのだろう。やはり身体能力で人並み以上に長けているらしく、彼は何かを音で察知したらしい。
だが、霊夢にはいつもの退屈な夜としか思えない。
霊夢がどういう事なのか、と不思議そうに雲豹を見つめている一方で、彼は服を手繰り寄せてすぐに着替えては、銃を構えはじめる。

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霊夢「そろそろお別れの時間ってわけね」
雲豹「……また、会える」
霊夢「ええ、そうね。また会いましょう。絶対に。アンタと過ごすの、なかなか悪くなかったわ」

雲豹の行動を見て、霊夢はすべてを察する。紫達が自分の救出の為にこの場所を嗅ぎ付けて、突入してきたのだと。
勿論、霊夢はシンジケート側の人間で、なおかつ紫に雇われている以上は彼女の指示に従う。
だが、霊夢が雇われて協力しているのと同じように、彼もまた雇われて行動している。――そこが、二人を結びつけたのかもしれない。

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雲豹は霊夢を一人部屋に残し、自身は部屋を後にして、廊下を突き進んで行く。
そんな彼を霊夢は黙って見おくりつつ、紫達がやってくるのをのんびりベッドの上で待つのだった。





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妖夢「まさかこんな堂々とロスサントス市内のモーテルに泊まってるなんて……」
紫「驚きよね。これも作戦のうちなんでしょうけど」

霊夢と雲豹の居場所を突き止めた八雲ファミリー達。紫が藍と妖夢と共に、直々に霊夢の救出に赴いたのは相手が雲豹だからに尽きるだろう。
仮にも彼は”暗殺者”として知られる存在。少しでも気を抜けば、間違いなくこちら側がやられる――。

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藍「今のところ敵の姿は見えないようですね」
紫「仲間がどれくらい居るかにもよるけれど、くれぐれも警戒は怠らないことよ」

深夜ということもあり、モーテルは不気味な程に静かである。一応ある程度の集客はしているようだが、時期的な物か、それとも偶々なのか。
武器を構えたまま、一行は慎重にモーテルの中を進んで行く。相手に感付かれないように。―――尤も、既に八雲ファミリーがやって来ている事を彼は感付いているのだが。

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雲豹「……」

廊下の先、物陰に隠れながら現在の状況を確認する雲豹。視線の先に居るのは勿論紫達八雲ファミリーだ。
幸いにもまだ彼の存在に彼女らは気付いて居ない。だが、二つ出入り口があると言えど、両方を埋められてしまえば、逃げる事が出来なくなる。
なんとかして、相手方に気付かれないように脱出したいところだが……。

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妖夢「霊夢さんはどの部屋に居るんでしょうか……」
藍「しらみ潰しに確認するしかなさそうだな」
紫「あら、そんな面倒な事をしなくても、ここに顧客名簿があるじゃない」

一体どこから持ってきたと言うのか、紫が取り出したのはこのモーテルの顧客名簿の載ったスマートフォン。
今や、デジタル化が非常に進み、紙の名簿を使うモーテルやホテルもある一方で、こうしたデジタル機器を用いた名簿も珍しくない。
このジェファーソンモーテルも例外ではないらしく、どうやら紫は上手い具合にデータを抜き出したようだ。

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藍「紫様、偽名の可能性が高いのでは?」
紫「そうかしら。”雲豹”なら霊夢の”名前”で部屋を借りると思うけれど?」
妖夢「そんなリスクの高い事、しますかね?」
紫「可能性の話だけれど……”雲豹”のプロファイリングが正確なら、間違いないわ?」

普通、誘拐犯が自分の名前、或いは人質の名前で部屋を借りるわけがない。だが、今回は少しばかり事情が異なる。
そもそもの話で誘拐犯が公共の場所を、宿泊施設を使うこと自体が稀なケースだと言える。人目に付く事は足が付く事と同義なのだから。

しかし相手は雲豹だ。彼は既に裏社会、そして公的機関にその存在が認知されて、ある程度の”犯人像”というか、性格が推察されている。
そのデータさえも今は紫の手元にある。霊夢を救出する過程で独自に紫が入手したもの。

このプロファイリングの精度がどれ程の物かは未知数だが、もし、この精度が非常に高い物だとすれば、雲豹はおそらく偽名は使わずに霊夢の名前を使っている可能性がある。

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妖夢「まさか本当にその通りだなんて……」

そしてその結果は言うまでもない。プロファイリングが導いた答えは正しかった。リストに乗るのは”ハクレイ”の名前。
いくら日本人や日系人がこのモーテルを利用していたとしても、この名前で被ることは早々ないだろう。
一行は、霊夢が泊まっているであろう部屋へと駆け足ながらも、慎重に向かって行く。

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雲豹「……わかった。惹きつける」

一方で雲豹。霊夢と共に泊まっていた部屋を後にし、屋上を経由し、裏口を目指して彼女らに追いつかれるより先に行動しているさ中、彼の電話には”彼女”からのコールが入る。
つまるところ、ここで彼らを始末しようと、どうやら”彼女”は雲豹を使って上手く彼女らを導こうとしているらしい。
その作戦を了承した雲豹は一度立ち止まり、廊下の奥を凝視する。

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妖夢「アレは……!紫さん、藍さん、アレ、見てください!雲豹ですよ!」
藍「何? 紫様、ここは私と妖夢が。紫様は霊夢を」
紫「あら、言われなくてもそのつもりだったわよ?」

二階に上がったところで廊下に見えるは雲豹の影。咄嗟に駆けだす妖夢。藍は妖夢と共に雲豹を追うと共に、霊夢を紫へと任せる。
尤も、紫は雲豹を見つけた時点で二人に雲豹を追わせて自身は霊夢の元へ行くつもりだったようだが。

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霊夢「あら、遅かったじゃない」

霊夢の滞在している部屋に入る紫。
その物音で自分を救出しに来たのをすぐに認知したであろう霊夢は、やって来た紫の姿が見えるなり、呑気に声を掛ける。

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紫「思っていたよりずっと元気そうね、霊夢。大体あなたがこうしていた理由はわかっているけれど」
霊夢「私は”敢えて”彼の元に残って情報を集めていたのよ」
紫「それで何か得たのかしら?」
霊夢「クラウの毛皮が極上なことくらいかしら?」

紫の予想通り、という具合か。
霊夢は怪我も何もしておらず、それどころか前よりも元気そうに見える。
普通の誘拐事件なら、犯人から暴行を加えられて……なんていうのが珍しくない中で、彼女はむしろそれとは真逆の高待遇を受けていたのではないかとさえ思える。

さて、霊夢は”敢えて”彼の元に残っていたと主張するが真偽は果たして。なんて問わずとも、既に答えが出ているのは紫は痛いほどわかっているのだ。
おまけにその主張をする割に得た情報は彼が”もふもふである”というのだから、何の役にも立つ情報は得られていないと言う事だろう。

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霊夢「さて……行きましょうか。ここに居る意味はないもの」
紫「あなたを雇ったのは失敗だったかしら?」
霊夢「そうでもないと思うわよ? もふもふ以外にも彼の情報はあるわ。例えば……そうね。彼の”本当の名前”とか」

ベッドで寛いでいた霊夢はそのままベッドを降りると、紫に”銃をちょうだい”と指図するように手を出す。
そんな霊夢に紫は少し呆れつつも、同時にこれが”彼女らしさ”であることも認知しており、そう深くは咎めず、
指図されるがままに、懐に忍ばせていたサブウェポンのハンドガンを霊夢へと手渡す。

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紫「詳しい事は後で聞くとしましょう。時間があまりないわ。今は咎めないでおきましょう。それに……私が咎めなくとも、藍があなたを咎めそうだしね」
霊夢「その時は庇ってちょうだい?」

霊夢が得たという彼の詳しい話を聞きたいところではあるが、今はその”彼”を捕り逃がしかけて居る現状。
話すよりも先に今は追うのが先、と紫は霊夢を引き連れて、先に行かせた妖夢と藍に続いて駆け足で彼女達の後を追う。

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藍「そこまでだぞ!」
妖夢「逃げられると思ったら大間違いです!」

一方で藍と妖夢。雲豹を追いかけ続け、屋上へとやって来た彼女達は雲豹と距離を詰めて、彼がモーテル裏の階段から逃げ出すより先に銃を発砲し、牽制する。
弾丸は彼を狙ったものではないが、一発でも撃てば、やはり人と言う物は何かしら反応を示す物。彼も危険と判断したのか、その場に立ち止った。

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雲豹「……」

そしてゆっくりと振り返る雲豹。黙ったまま口を開く事はせずに、そのまま二人を見つめ続けている。その手にはマシンガンが握られ、それを彼女達の方に向けている。
2対1。傍から見れば有利な状況は藍と妖夢。だが、相手は暗殺者として名高い人物……人数の優劣程度で勝敗が決まるとは到底思えない。
暫しの間こう着状態が続く。お互いで銃を向けあったまま、何も動くことがないまま、1分は経っただろうか。

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ダダダダダダ!!

その時だった。ヘリコプターの音が近付いているのには気付いて居たが、突如として機銃が掃射される音が聞こえたのは。

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藍「攻撃ヘリだ、伏せろ!」

幸か不幸か、屋上にはエアコン用の室外機が数多く置かれており、それが遮蔽物となってくれている。
尤も、室外機の耐久性などたかが知れているのは事実。おそらくそう長くは持たないだろう。だが、何もないよりはマシだ。

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藍「……対空兵器も持ってくるべきだったな」
妖夢「手も足も出ないですよ、これじゃ……!」

ヴァルチャー・サベージ。攻撃ヘリとして名高い物で、12.7mmの高威力なミニガンとミサイルポッドを搭載している。
その攻撃力は絶大な物で、高威力なミニガンは1発で体を貫き、穴あきチーズへと変えてしまう程の物。おまけにミサイルポッドのおかげで弾幕的にミサイルを放てるのだから、凶悪以外の言葉が出てこない。

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紫「なるほど、私達をここで始末するつもりなのね。ならこちらもそのつもりで行かせてもらうわ?」

屋上のミニガンの銃声を聞いて、更に駆け足で屋上へとやって来たのだろう。
遠目ながらも、命辛々、藍と妖夢がなんとか身の安全を確保したのを確認した紫は、
このヘリの急襲が雲豹の脱出の時間稼ぎでは無く、この場に揃っている八雲ファミリーとその協力者の始末の為だと察し、秘策を繰り出す。

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EMPグレネード。まだ正式には開発段階で実用化されて居ないはずのものだが、どういうわけか紫はそれを隠し持っていたようで、敵の攻撃ヘリ目がけてそれを投げつける。
と、同時に小さな閃光が走ると共に、ヘリコプターは異常を来したのか、制御が不安定になったらしく、機銃掃射が止むと共に、激しくふらつきながら、モーテルを離れて行く。

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紫「雲豹には逃げられたか……」
藍「すみません、紫様、私としたことが」
紫「敵の目的は私達を始末する事だったんでしょう。考えるのは後よ。今はここを離れましょう。警察が直にやってくるわ」

攻撃ヘリの対処をしている間に、やはり予想はしていたが雲豹には逃げられてしまった。
だが、攻撃ヘリで穴あきチーズにされなかっただけマシと言えるだろう。命こそがすべてなのだから。
今は誰が失敗した、こうするべきだった、今後は、などと考えるより先ここから離れるべきだ。
恐らくこの騒ぎを聞きつけて警察がやってくるのは時間の問題。これを引き起こしたのは相手側だが、こうする要因を作ったのは八雲ファミリー側。
IAAの後ろ盾を得られる状態と言えど、やはり警察のお世話になるのは気分が良くない。一行は早々に階段から裏側へと降りて、モーテルを後にする。