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バイスシティ バイスポイント ボートヤード
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バイスシティ、南部。港エリアに存在するボートヤード。
ポップスター亡きあと、バイスシティを経済的に牛耳っているのはスカーレットグループ。
スカーレットを筆頭に、関連企業や大口取引先としてスカーレットと関わりを持つ企業は多数存在しており、このボートヤードもそんなスカーレット関連物件の一つである。

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Bryson(Br)「順調に物件の買収が進んでるな」
Henry(He)「あらかた関連企業と物件の買収は済んでる。後は奴らがどう出てくるかだな」

ダガンファミリーの一員でもあるヘンリー・ダガンの手により、既にバイスシティのスカーレット関連企業や物件の買収が完了している。
勿論、これは違法性のある様なものではなく、合法的な方法により行われたもの。尤も、多少の”強引な”やり方は存在したのは間違いないだろうが。

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He「このままイギリス野郎共を追い出せると良いんだけどな」

スカーレットの経済的支配から解放する為に、はたまた、今は亡きポップスターを再興する為、2人は共に立ちあがる。
”バイスシティの為”という名目の、彼らの復讐、はたまた、エゴの為に……。



バイスシティ エスコバル国際空港
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時刻は正午。12時ほぼ丁度に到着予定のサンフィエロ発、バイスシティ着の便を待つ一人の人物の姿。
彼の名前は林虎。台湾系アメリカ人で、バイスシティ市警・ワシントンビーチ警察署に配属されたばかりの新人警官である。

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林虎「そろそろ時間のはずなんだが……」

獣人はマイノリティの中でもマイノリティなだけあり、かなり少数派。
それに大柄なのも相まって非常に目立つ。故に通り過ぎる何人かが彼に視線を落とす……が、こんな事、彼は慣れっこだ。気にする事もせず、ただ、ここにやってくるとある人物を待つ。

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四季「久しぶりに来ましたね、バイスシティ……何年振りでしょうか?」

到着ロビーにて、周囲を見回しつつ、久しぶりのアメリカ南部の空気を味わう四季映姫。照らしつける太陽、温かい気候……すべてが懐かしいこの地。
サンアンドレアスも確かに温暖な気候だが、その気候は乾燥地故の気候であり、バイスの気候とは異なる。

既に5年近くが経過しているだろうか? いや、もっとだっただろうか。ここに来ると”戻ってきた”と感じるのはやはり、長い間バイスシティに住んでいたが故だろう。

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林虎「アンタが四季映姫か?」
四季「ええ、私が四季映姫・ヤマザナドゥです。お出迎え感謝します」

林虎が待っていたのは彼女。SAPD本部署長を務める彼女はいわば、SAPDのトップ。その四季の立場故に、古巣であるVCPDは林虎を迎えとして寄越したのだ。

では何故、四季が古巣であるバイスシティに戻って来たのか。
いや、厳密には戻ってきたわけではない。視察をしに来た、というのが正しいだろう。
視察しに来たのにはある理由がある。それはサンアンドレアスの現在の事情が絡んできている。

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林虎「このままワシントンビーチ署に向かえば良いか?」
四季「ええ、お願いします。ホテルも向こう側なので」

林虎は乗り付けてきたポリスクルーザー・ユーティリティの助手席に四季を通し、運転席に乗り込んで、サイレンは鳴らさずに東側に向けて車を走らせる。

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林虎「ここには何をしに?」
四季「視察です。バイスシティには対ストリートレーサーユニットの”タスクフォース”が居ると伺って居ます」
林虎「タスクフォースか。奴らは結構獰猛だ」

四季が頭を抱えている事。それは増えるストリートレーサーだ。
数年前からその兆しは見えていたし、”バーンアウトレース”と称された派手なレースも行われていたが、今はその比ではない。
昼夜問わず、ストリートレーサーが市街地を中心にレースを、イベントを繰り広げている為、手間を焼いている。
それに、街にはストリートチューナーマシンやチューニングショップも増え始めている。
ロスサントスのLSCやサンフィエロのウィールアーチエンジェル、ラスベンチュラスのトランスフェンダーはその筆頭だろう。

無論、対策はしている。だが、そろそろ本格的な対抗策を出すべき時なのは間違いない。例えば――。

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四季「獰猛でなければ勤まらないでしょうね。相手は厄介な犯罪者……。あなたはその見た目もありますし、適任だと思いますが」
林虎「俺はまだ新人だ。新人に精鋭チームは務まらないだろう」
四季「新人であろうと関係ないと私は考えて居ます。完全実力主義の、能力だけが階級を決めるユニット。私が考えているのはそういうユニットです」

バイスシティもまた、ストリートレースが盛んに行われている地域の一つ。四季映姫が居た頃はそこまで盛んではなかったが、
四季がバイスシティからサンアンドレアスに移ることになった辺りから、徐々に兆しが見え始めた。

次第に昼夜危険なストリートレースが行われることとなり、バイスシティ市警は本格的な対策としてある一つのユニットを結成した。
”タスクフォース”と呼ばれたその組織は対ストリートレーサーユニットであり、独自の管轄、独自の無線で強いチームプレーを得意とし、ストリートレーサーを追い詰める。
市民や、警察好きな子供からしたらこれほど”カッコ良い”と思わせる組織は無いだろう。そういう存在が、バイスシティにはある。

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林虎「完全実力主義か。悪くなさそうだ」
四季「形式的な上下関係が不要とは言いませんが、実働部隊に関しては不要だと私は考えて居ます。腕のたたない者が上に立つより、腕の立つ者が上に立つべきだと」

四季は古巣に出来たその組織に近い組織をサンアンドレアスに築こうとしている。
かつてのトライアル7のような内務的なものではなく、もっと広く口外され、市民やメディアからも支持を得られるようなユニットを……。

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林虎「そろそろワシントンビーチ署だ。俺はアンタを下ろして、このまま休憩に入るが……」
四季「お構いなく。私はかつての仲間たちに挨拶をしてから、タスクフォースの司令官と話をしますので」
林虎「ん、そうか」

2人の乗ったパトカーはワシントンビーチ警察署の前へと到着する。
バイスシティには数か所警察署があるが、タスクフォースの本部が設置されているのはダウンタウン警察署ではなく、ここ、ワシントンビーチ署だ。
尤も、四季が最初に此処を訪れたかった理由はそれだけではない。かつて配属されていた場所……それがここ、ワシントンビーチ署だったのだ。

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四季「そういえばあなたの名前を聞いてませんでした。お名前は?」
林虎「俺は林虎。こんな見た目じゃわからないだろうが、台湾系だ」

ワシントンビーチ警察署に到着し、車を降りようとする四季はふと、思い出したように林虎に名前を尋ねる。それは――彼女がどこかで、彼とまた関わるような気がしたから。彼の名前を聞いて一度頷いては、車を降りて、署へ入っていく。



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