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ロスサントス ダウンタウン ペントハウス
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ロスサントスの中心街。オフィス立ち並ぶビル群だが、その中には大きいマンションがある。
そんな最上階で行われるダガン主催の煌びやかで派手なパーティー。これこそが現代のアメリカンドリームと言えるだろう。尤も、格差が広がり、混沌を極めるアメリカでは、虚構の塊に見えなくもないのだが。

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そんなペントハウスで行われているパーティーに持ち込まれた1台の超が付く程の高級車――ブルトン・テンプトレス。

アラブ首長国連邦の自動車メーカー、ブルトンが7台限定で製造したハイパーカーでエンジンにはCTAのツインターボが使用され、インテリアには金とダイヤモンドがあしらわれている。
まさしく石油の国らしい、超高級車だと言えよう。

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Franklin(Fr)「こっちは潜入完了だ」

わざわざロデオにある高級テーラーで仕上げたタキシードに身を包んだフランクリン。
正直に言えば、普段の服装から考えるとあまりお世辞にも似合っているとは言えないのだが、
ドレスコードを考えるとある程度のブランド物ないしは、こういったタキシードに身を包んだ方が悪目立ちしないと判断しての行動だ。

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魔理沙「私もちょうど入ったところだ……にしても、噂通り派手なパーティーだな。アリスもこっちに来たら良かったんじゃないか?」
アリス「そういう場が苦手なのは知ってるでしょ?」

タイミングを少しずらしてフランクリンと同じく潜入したのは魔理沙。彼女は普段の服装を変えこそしていないが、
普段の服装からある程度目立つ格好に変わりはなく、このような場ではかえってこの服装の方が潜入しやすいだろうと、レスターがフランクリンと共に潜入役として抜擢した。

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魔理沙「にしてもこのパスよく偽装出来たな?」
アリス「あの程度のセキュリティなんて簡単に突破出来るわよ。それよりも、会場内から出す方法は思いついたわけ?」

パーティーは入場パスでセキュリティチェックを行っており、パスを持っていない人間はこの会場に立ち入ることすら出来ない。
この入場パスはスマートフォンと紐づけられているタイプの物で、今回アリスはそのパスをクラックして、偽装。もちろん、飛ばしの携帯で。

特に入場口の警備員に呼び止められることも無く、問題なく潜入が出来た辺り、アリスのハッキングスキルが上達したことが伺える。
いくら元探偵で、そのスキルを多少なりとも持ち合わせていたと言えど、ハッカーとしての才能を伸ばすとは、本人も思いもしなかったことだろう。

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Fr「車は中央に展示されてるな。問題と言えば、周りに人が居るくらいか?」
魔理沙「いや、よく見てくれ。タフな警備員に、パーティー客に扮した警備員までうようよ車の周りを徘徊してるぜ」

ターゲットのテンプトレスが展示されているのはど真ん中の最も目立つ位置。
このパーティーの趣旨はダガンの保有するこの車を見せびらかして彼の自己顕示欲とその築き上げた富を誇示する事。つまり、この車こそがこのパーティーのメインディッシュなわけだ。

当然、このメインディッシュは超高額。下手をすれば、一般的なオフィスワーカーの生涯年収分の金額がこの車の値段だ。
そんな超高額車両に引っかき傷の一つでも付けられたら堪ったものではないだろう。ダガンは多数の警備員を雇って、常にこの車を警戒させている様子。

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魔理沙「警備員を退かさないことには近くでじっくり見るのも難しそうだ」
Fr「となると、まずは警備員をおびき寄せるところからだな」

体躯の良い警備員に明らかにパーティー客とは違う行動の目立つ、客に扮した覆面の警備員。彼は交互に車の周りを巡回しており、厳重な警備体制がとられていることは誰の目にも明らかだ。
尤も、この会場に居るパーティー客の大半は既に酒が回っていて、いちいち車の警備体制にまで頭を回すことなどしないのだけども。
パーティーなど、所詮、酒を飲んでどんちゃん騒ぎする理由付けに過ぎないのだから。

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アリス「それなら良さそうなものがあるわよ」

監視カメラをクラックして、画面越しにパーティー会場、そしてこのペントハウスをチェックして居るアリス。
彼女が見つけたのは爆竹。おそらくはパーティー用に運び込まれたものだろうか。用途はともかくとして、せっかくあるのだから”有効活用”しない手は無いだろう。

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Fr「よし、それで行こう。俺が警備員を引き寄せてる間に魔理沙はダミーのキーで車を運び出してくれ」
魔理沙「お安い御用だぜ」

ここからやることは大体決まっている。
口にせずとも、連携は完璧に取れるのを証明するかの如く、魔理沙はすぐさま、爆竹が保管されているという部屋の前を巡回中の警備員を呼び止める。

フランクリンはそれを見るなり、人目を盗んで警備員に見つからないよう、部屋に忍び込む。それを見届けた時点で魔理沙は警備員との会話をやめてその場を離れる。実にスムーズな流れ。

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Fr「爆竹は入手したぞ。それより、ここから運び出す準備は出来てるのか?」
Eddie(Ed)「近くのヘリポートで待機してる。いつでも準備OKだぜ」

ここから運び出す方法だけは決定済み。
なにせ、ターゲットがペントハウスの一番目立つ場所にあるということを考えれば、必然的に運び出せる方法はかなり限定される。

真っ先に思いつくのは車をここまで上に運んだ備え付けの貨物エレベーター。
だが、いくらペントハウスそのものをクラッキングしてコントロール下に置いたとしても、警備員の猛攻を避けては通れない。つまり、リスクが高すぎるというわけだ。

となると、選択肢はおのずと見えてくる。そう、空輸だ。
ヘリの操縦はエディに任せて、魔理沙とフランクリンの仕事は安全にヘリが車をサルベージ出来るようにすること。

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Fr「魔理沙、準備は良いか?」
魔理沙「ああ、いつでも。車の近くに居るぜ」

魔理沙の準備も完了したところでフランクリンは爆竹を鳴らして、一気に注目させる。発破音に驚き、そして注目するのは警備員だけではない。パーティー客も同様だ。
いくら会場が盛り上がっていて、音に溢れて言おうと鼓膜を大きく振動させる発破音はある種、拳銃の発砲音にも近く、パンパンと大きい音が何度も鳴り響けば、必然的に人間はそちらに注目せざるを得なくなる。

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「おいお前!なにしてる!」

警備員が駆け足でフランクリンに駆けよって行き、車の周りから警備員がはけたタイミングで魔理沙はダミーキーのロック解除ボタンを押す。
正常に動作したダミーキーはターゲットのテンプトレスのロックを解除し、自動的に運転席側のドアを開ける。魔理沙もまた駆け足で車に乗り込んでは、エンジンをスタートさせる。

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魔理沙「いい音だな。おい、フランクリン!脱出するぞ!」

唸るエンジン音はまさしく獣の咆哮。アロイス製の水平対向ツインターボエンジンの音が心地よく響くが、今はそれを堪能して居る場合ではない。
助手席側のドアロックを解除し、フランクリンに催促しながら、魔理沙はギアをドライブに入れ、サイドブレーキを解除し、ゆっくりと車を走らせ始める。
と、ここでフランクリンが助手席に飛び乗ったところでドアをロック。ここからは――。

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Fr「おい、魔理沙。ここで走らせてどうするつもりだ?」
魔理沙「どうするもなにも、これから空を飛ぶんだぜ?」
Fr「……正気か?」

エンジンをうならせながら、アクセルとブレーキを交互に踏み、そしてハンドルを切ってサイドターンを数度。
タイヤが摩擦で溶けてはゴムの匂いが漂ってくると共に、煙が立ち込め、パーティー客は恐れおののきながら、車から離れる。
――かと思いきや、その一方で、スマートフォンを構え、この光景を撮影して居るものさえいる始末。これが今の現代社会というわけか。

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Fr「車は空を飛べないんだぞ」
魔理沙「誰もそうとは決めつけてないんだぜ」
Fr「おいおい嘘だろ!?」

魔理沙には考えがあるらしく、フランクリンの制止も他所に、アクセルを踏み込んだかと思えば――次の瞬間には車はペントハウスの屋上を突き抜けて、車は空中へと繰り出される。

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Fr「クソっ!!」

フランクリンが思わず叫ぶのも無理はない。
空中へと繰り出されたテンプトレスはペントハウスの隣にあるビルの屋上へと着地。かと思えば、続けざまに更に屋上を通過し、再び空中へ……。

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魔理沙「よし!大成功だぜ!」
Fr「こんなんじゃ命がいくつあっても足りないぜ……」

更に隣のビルの屋上へと着地したところで、魔理沙はブレーキを強く踏む。綺麗に着地をしたところで、車を降りては2つ隣となったペントハウスを眺めつつ、してやったり顔。
対するフランクリンは隣で青ざめた顔をしつつ、深くため息を吐く。生きた心地がしなかった。まあ当然だろう。もし失敗して真っ逆さまに落ちようものなら……。

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Ed「全く、無茶しやがるな」

一連のそれをヘリの操縦席から観ていたエディ。彼も流石に驚きを隠せないようで、声からその調子が伝わってくる。
とはいえ、やることはやる。エディはヘリを着陸させ、後部ハッチを開け、2人に車を中に入れるように指示を出す。こうして、インスティンクトの盛大な車両強盗が完了するのだった。