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ラスベンチュラス ストリップ大通り ホテル エメラルドアイル
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こころ「どこへ行ってたの、幽香さん」
幽香「”知り合いの知り合い”のところへ少しね。それよりも、彼は?」
こころ「猫さんなら今お風呂入ってるよ」
幽香「お風呂嫌いな”猫さん”にしては珍しい」
こころ「私がしっかりお手入れしてあげてるからね」

ラスベンチュラスのホテル、エメラルドアイルのスウィートルーム。幽香がラスベンチュラスに滞在する際には頻繁に利用するホテル。
仕事を一区切り終え、秘書であるエリーに任せておいて、自身はラスベンチュラスを訪れた。その理由は――。

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こころ「こっちに来たのってやっぱり、レミリアさんとかスカーレットのことが気になったってことかな」
幽香「そんなところ――と言いたいところだけど、親愛なる友人の様子を確認しておきたくなったのよ」
こころ「ふふ、やっぱりね。本音はそっちだと思った」
幽香「どっちも本音だけれどね。レミリアの事も勿論気にかけているもの」

幽香が訪れた理由。それは彼女が心を開いている数少ない友人であるこころ、そしてヨーヘイの様子を見に来たのがまず第一。
無論、レミリアがラスベンチュラスでトラブルを抱えているのも、こっちに来る要因の一つとなったのもまた事実なのだが。
あくまでレミリアの事を理由にした方が都合が良かった、といえば聞こえは悪いが、ある意味それもまた幽香らしい行動と言えるだろう。

そもそも、レミリアと幽香はライバル企業通しであることもあり、犬猿の仲かの如く報じるメディアもあったりする。
だが、実際のところはシンジケートを組織している仲間であること、二人ともITに強いこと、以外に共通点も多いこともあり、友人としても仲が良い。

尤も――その関わり方はまたこころやヨーヘイ、エリーに対するものとは若干異なるのだが。

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Yohei(Yh)「なんだ、来てたのか?」
幽香「ええ。様子を見に。にしても何よ、その格好。レディの前ではしたないと思わないわけ?」

バスルームから出てくるヨーヘイ。ドライヤーである程度乾かしたようで、濡れネコというほど毛並みは滴っては居ない様子。
まあ若干ゴワゴワしているように見えるのでブラッシングが必要だろうが。パンイチという格好に呆れ顔にも近い表情を浮かべる幽香。

だが、それがジョークに近いものであるのもヨーヘイは理解している。確かに。幽香もこころもレディに変わりはないし、半人半獣といえど、彼も立派な男だ。
デリカシーという観点で言えば、彼の行動ははしたないと思われても仕方がない。だが――。

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Yh「脱げって言ってきた奴のセリフだとは思えねえな」
幽香「あら、快く引き受けたのは誰だったかしら」
Yh「快く受けたつもりはねえんだが……」
こころ「幽香さん、アレは誰がどう見ても脅迫だよ……」

思えば、幽香の知的好奇心から、半ば脅迫にも近いような形で彼を脱がせに掛かったのも大分前の話。
流石にあの頃と比べれば、ヨーヘイも大分慣れてきた感じはするが、それでもまだシャイに変わりはない。

そして気づけば、幽香も、こころも、そしてヨーヘイも。今はこの場に居ないがエリーも。この4人はお互いでお互いの胸の内を打ち明けられるような対等な、家族にも近い、友人関係を深めていったのだと感じる。
だからこそ、こうしてジョークを飛ばせると言っても過言ではない。幽香の中で、改めて、より深い、親友とも呼べる友人関係は時間の長さなど、関係ないのだと思わされる。

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幽香「脅迫だなんて失礼ね。まあいいわ。それよりも、CMの次はドラマの撮影だったかしら?」
こころ「うん、そうだよ。好きでやってる仕事だけど、やっぱりハードなスケジュールを組まれちゃうと息する暇もないよ」
幽香「でも演技をしてるあなたはとっても活き活きしてるように見えるわ?」
こころ「演技をするのは大好きだから」

元々、CM撮影でラスベンチュラスを訪れていたこころ。
だが、そのままドラマの撮影にも入ることになったらしく、もう暫くはラスベンチュラスでのホテル生活を強いられることに。
それに合わせて、幽香もまた行きつけのホテルのスウィートを取って、二人を招き入れたわけなのだが。少なくとも二人が止まっていたホテルよりもずっと広い部屋で快適なのには間違いない。

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幽香「そうそう。和食レストランに予約を入れてあるのよ。行きましょう?」
こころ「いいね、和食。食べるの久しぶりかも」
幽香「たまには日本に行ってリフレッシュしたいところだけど……暫くはそうもいかなさそうよね。せめて食事くらい、日本気分を味わいたくて」
Yh「和食?」
こころ「前に食べたお寿司のことだよ」
幽香「厳密には和食の一部が寿司というだけだけど……まあ行けばわかるわ」

時間はそろそろ夕方を過ぎる頃。つまり、お腹が空く頃。幽香はラスベンチュラスにある和食レストランに予約を入れておいたらしい。
日系人の親を持つ幽香。和食を頻繁に食べるわけではないが、彼女の舌はどうも、和食と、イタリア料理に惹かれるらしい。
そしてこころもまた、日本人であることもあって、やはり自ずと舌は和食を求めがち。尤も、ハンバーガーやらフライドチキンやら、ジャンクフードも好きではあるのだが。

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ヨーヘイが服を着たところで、3人はホテルのスウィートルームを後にして、幽香の手配したリムジンで和食レストランへと向かうのだった。



ボーンカウンティ バーレオカルダド
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紫「そういえば、霊夢。あなたに聞きそびれてたことがあったわ」
霊夢「どうしたのよ、急に」
紫「あなたが攫われて、救出に行ったあの晩の事だけど、彼と関係を持ったのかどうかって」
霊夢「なんだ、そんなことを聞きたかったの?」

ボーンカウンティ。バーレオカルダド。砂漠地帯の小さな小さな町。
そこに似つかわしくない1台のスーパーカー、イタリRSX。紫色の目に毒と言いたくなるようなそのカラーリングのRSXを走らせているのは紫だ。

彼女が向かう先はこの小さな田舎町にある船着き場。荷物の受け取り……ではなく、彼女の古くからの知り合いと久しぶりに話をする為だ。

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霊夢「言っておくけど、仲を深めて、お風呂上がりの着の身着のまま、彼の極上の毛皮を堪能した事は認めるけど、アンタが思うような関係は持ってないわ」
紫「あら、私はてっきりそういうものかと」
霊夢「勘違いされても無理はないでしょうけどね。でも私は彼の毛皮、大好きよ」

その道中に紫は霊夢を救出に言ったあの晩の事を尋ねる。
モーテルの一室で裸同士で寄り添う男女。その字面だけで想像できる行為は一つだけだが、飽くまでもそれはないと否定する。
まあ男女……と言っても片方はもふもふの毛皮を纏った獣人なので、普通の男女とは異なるのは間違いないだろうが。

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紫「誤解されそうな言い回しね。……そういえば、藍の尻尾にもよく触ってたわね」
霊夢「モフモフは数少ない癒やしよ。動物を飼いたいけど、家を開ける事も多いこんな環境じゃ夢のまた夢ね」
紫「今度アルター社の幽香にでも頼んでみたら良いんじゃないかしら?」
霊夢「あそこに居るホワイトタイガー君のこと? 顔怖いし、近付き難い雰囲気あるけど、モフらせてくれるのかしら」

霊夢の仕事や境遇を考えれば癒やしを求めたくなるのも至極当然のことと言えるだろう。彼女が癒やしとして求めたものはもふもふの毛皮。ただそれだけだったようで。
尤も、持ち家という持ち家がなく、各地を点々としている霊夢が1匹のペットを飼える状況にないのは事実。
となると、必然的に常に癒やしを求めている事に……。

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紫「また期間が空いてしまったわね、ミスター・トゥルース」
Truth(Th)「いいや、気にしておらんよ。大賢者殿」
紫「今日は霊夢も連れて来たわ。会うのはいつ以来かしら?
霊夢「爺さんと会うのは多分4年ぶりくらい? 私がこっちに来たばかりの時だったような」
Th「それくらいだろうが、時間の長さを気にした所で意味などあるまい」

そうこうしているうちに車は待ち合わせ場所へと到着。一足先に到着していたのはミスター・トゥルース。
紫が会いに来た古い知り合いとはまさしく彼のことだ。何故、このタイミングで彼を会う事にしたのか。それを知るのは紫、ただ一人……。



ラスベンチュラス オールドヴェンチュラスストリート ダガンカジノホテル
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Avery(Ay)「全く、使えん連中ばかりだ」

部下からの報告をホテルで受け取るエイブリー。
最近のダガンファミリーはシンジケートとの全面戦争に突入し、彼にとって良くないニュースもかなり増えてしまった。

最初は彼が主催するリベレーターレースの競技車両の強奪。
これだけでもかなり怒り心頭だったエイブリーだが、追い打ちをかけるように、超高額スーパーカーであるブルトン・テンプトレスを盗まれ、美術品まで奪われた。
被害総額だけでも400万ドル、いやそれ以上はくだらないだろう。そんな報告ばかりでブチ切れる寸前……だが、客人が居る手前、そんな端ない真似はしないのが彼でもある。

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Cecilia(Ce)「お取り込み中かしら?」
Ay「いや、大丈夫だ。それよりも今日は何用かな、お嬢さん」

エイブリー・ダガンの元を訪れた客人。彼がやり手のビジネスマンであることを考えれば、客人が訪れることなど何ら珍しいことではない。
――が、今日訪れた客人は彼の裏の顔、つまりアメリカの裏社会でさえも幅を聞かせている、ダガンファミリーの長としての彼に会いに来た人物だ。

そう。セシリア。彼女だ。
既に彼女がダガンファミリーと接触をしていて、ある程度の関係を築いている事はIAAもFIBも把握済み。だが、どの程度のリレーションが結ばれているのか。
実態が掴めていない、というのが現状だ。

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Ce「そちらの様子を伺いに……なんて、何があったのか全てわかっているのだけれど」
Ay「お見苦しい物をお見せしてしまったかな?」
Ce「そんなことはないわよ? 彼らの力が強大になりつつあることはあなたもご存知でしょうし、私自身も知っての事」

セシリアの情報網を持ってすれば、ダガンファミリーに起こったありとあらゆるトラブルは手に取るようにわかる。
だが、これもセシリアの想定の内。そしてダガンファミリーでさえも、多少の計算違いこそあれど、被害を被るのは想定内ではあった。

お互い、それをわかっている上で手を組んだのは、ひとえに言って、利害が一致したからに他ならない。

現在のアメリカの、それも西海岸において、シンジケートは障壁と言わざるを得ない。
テキサス出身でテキサスに根城を構えつつ、アメリカ各地に影響力を及ぼしているダガンファミリーにとって、シンジケートが強いサンアンドレアス州は、徐々に難攻不落の要塞となりつつある。

サンアンドレアス州など、鼻から眼中にはなかった。だが、今やシンジケートのその影響力はSNS等を中心として、徐々にアメリカ全土に広がりつつある。そうなれば、ダガンファミリーだって、その影響力を失いかねない。

つまり、セシリアがダガンファミリーと手を組んだのはそういったダガンファミリーの意図と、自身の目的が一致したからに過ぎないのだ。

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Ay「だが、まさか奴らがここまでやり手だとは思いもしなかったな」
Ce「私がもう少し力を貸すべきだった。なんて、あなたの所の問題はあなたが全て解決してきたわけだから、私の出る幕なんて無いかしら?」

ダガンファミリーがここまでアメリカで影響力をのさばらせてきたのは、エイブリー・ダガンの存在あってこそ。
無論、ダガンファミリーが窮地に陥る事もなかったわけではない。
だが、そんなときでさえも、このエイブリーという一人の男が必死にあの手この手を尽くして来たからこそ、現在のこの確固たる地位を確立しているのは紛れもない事実。

そしてセシリアはそんなエイブリー・ダガンという男を珍しく、評価している。普段から人を信用もしてなければ、他人を評価するなんてことをしていない彼女が彼を評価しているのは、年長者は敬うべき、という考えを多少持ち合わせているからか。

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Ay「ケースバイケース、と言ったところだな。尤も、然るべき時に、頼まざるを得ない事もあるかもしれない」
Ce「もしそんな状況に陥ることになるとすれば、あなたが頼むよりも先に、私の方から手を回すわ」

現状、エイブリーの方からセシリアに泣きつくような状況下にはまだなっていない。
というよりも、そういう状況に陥ったとして、彼がそんな事をするような玉ではないのはセシリアがよくわかっている。
そしてエイブリー自身もそれを理解しているからこその、曖昧な回答。

この言葉の裏を読み取れるのはセシリアだからこそ。彼女にしては珍しく、彼を”立てよう”とするのだから、やはり、エイブリー・ダガンという存在が、生きる伝説に近いのかもしれない。